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夢二郷土美術館
館長 小嶋光信
夢二生誕140年を記念する展覧会が、アール・デコ様式美の名建築として名高い旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館の本館)でこの6月1日から始まった。
旧朝香宮邸は当時皇族であった朝香宮・鳩彦王が大正11~14年までフランスに留学された際に目の当たりにしたアール・デコの様式美に魅せられ、フランス人装飾芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼して昭和8年に竣工した、当時の雰囲気を色濃く感じる優れた建物であり、現在は国の重要文化財にもなっている。
さらに、朝香宮家の次女、湛子女王が夢二ファンで、作品を自室に飾っていたという御縁もあるという、まさに展覧会の会場である建物と夢二作品が一体になって大正浪漫を感じさせる稀有な夢二展となっている。
今回の展覧会会場については夢二学会の岡部先生と東京都庭園美術館の牟田副館長が師弟同士という御縁で実現し、夢二生誕140年に最も相応しいシチュエーションをご提案いただけたと感謝している。
夢二生誕140年記念展は岡部先生監修のもとに、当館では小嶋ひろみ館長代理が主体となって担当し、東京都庭園美術館の牟田副館長と鶴さんをはじめとする建築と内装、ルネ・ラリック(ジュエリー・デザイナー、ガラス工芸家)とアンリ・ラパンの作品を知り尽くしている学芸員の皆さんによって夢二作品がディスプレイされていて、まさに大正浪漫の真骨頂が表現されている。これに勝る夢二展はそうそうないだろうと思えるほどだ。
出展作品は、生誕130年を機に見つかったがコロナ禍での開催となった生誕135年展で発表が途中やめとなった≪西海岸の裸婦≫や、行方が分からなかった≪アマリリス≫が80年ぶりに生誕140年を前にして発見され、初公開されることとなった。
加えて、夢二の最期を看取った富士見高原療養所の正木不如丘院長に託したスケッチ帳などもあり、本当に不思議と記念展のたびに幻の夢二作品が次々と里帰りしていて初出品の作品もご覧いただける。夢二芸術の原点は「郷土(ふるさと)」岡山にあることがこの展覧会で感じていただけたら幸いだ。
こんなに贅沢なシチュエーションで夢二の大正浪漫を限りなく満喫できる東京都庭園美術館に是非お越しいただきたい。夢二が活躍した古き良き時代にタイムスリップしたような感覚が味わえると思います。
写真: 東京都庭園美術館 会場風景