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約50年もの間所在不明だった竹久夢二の名作 油彩画《アマリリス》が、夢二生誕140年のためにわざわざ帰ってきてくれたのかと思うほどタイミングよく、岡山にある当館(夢二郷土美術館)に里帰りして新収蔵作品となりました。
この作品は、昨年の夏に竹久夢二学会理事の岡部昌幸先生から小嶋ひろみ館長代理に「ある画廊に夢二の油彩画が出ているようです。この作品は本来美術館で所蔵するべき作品でしょう」とのご連絡とアドバイスをいただき、早速、館長代理が画廊に作品を調査に行き、私へ《アマリリス》が見つかったとの報告がありました。
私も上京した折にその画廊でその作品を拝見し、現存が確認できるのは約30点と希少な夢二の油彩画の中でも名作といわれる1点に出会えた喜びと、その場で果たして本物なのか等のいくつかのチェックをし、即座に購入を決めました。
昨年12月に待望の作品が当館に持ち込まれた際、《アマリリス》に描かれている少し愁いを帯びた夢二式美人が、まるで《モナ・リザ》のような微笑みで里帰りを喜んでいるような気がしました。
この《アマリリス》は、大正8年に福島で開催された「竹久夢二抒情画展覧会」に出品された後、夢二がお葉と長期逗留した東京の「菊富士ホテル」のオーナーへお礼として贈り、当時の文化人達が多く利用したそのホテルの応接間に飾られていましたが、ホテルが昭和19年に閉館された後は所有者が不明となっていた幻の名画の一つです。
花言葉は色等によって様々ありますが、夢二が描いた赤色の「アマリリス」の花言葉は「輝くほどの美しさ」で、描かれた花をよく見ると赤一色ではなく中心が白色となっており、白色の「アマリリス」の「内気」とが重なって「内気さの中に秘めた輝くほどの美しさ」という言葉が思い浮かびます。画面の中の女性のちょっと愁いを帯びた表情がとても印象的で、夢二はその花言葉を女性の表情の描写にかけたのかな、と勝手に思っています。
9年前の生誕130周年を機に小嶋ひろみ館長代理が開設した当館の公式Facebookに夢二がアメリカでお世話になった著名な写真家・宮武東洋さんの孫のアラン宮武さんからの1通のメッセージが届いたことから、夢二が滞米中に描いた幻の名画《西海岸の裸婦》(油彩画)が岡山に里帰りを果たしたり、2016年の夢二生誕の9月に夢二の絵から飛び出してきたような黒猫(今はお庭番頭ねこ黑の助として活躍中)が現れたり、また今回は、夢二の最期を看取った信州・富士見高原療養所の正木不如丘院長へ夢二が託した遺品でもある外遊中の貴重なスケッチブック2冊が里帰りしたりと、何かに導かれるように夢二が終生こよなく愛した郷土岡山へと次々に作品や資料が里帰りを果たしています。
こんな素晴らしい夢二作品が来年6月からの「東京都庭園美術館」を皮切りに、9月に岡山の当館「夢二郷土美術館」、2025年1月に「あべのハルカス美術館」など全国の5館以上で開催予定の「生誕 140 年 YUMEJI 展 大正浪漫と新しい世界」と題した巡回展で展示公開される予定です。
みなさん、乞うご期待です!