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館長メッセージ
夢二郷土美術館 館長 小嶋光信 夢二郷土美術館を切り盛りして、ここまで守ってきた学芸員であり統括マネージャーであった小川晶子さんの訃報が、小川さんの思いを次の時代にバトンタッチするかのようにこども学芸員の任命式開会前に知らされました。 この数年、小川さんは病気がちでしたが、夢二郷土美術館を守っていかねばとの一心で、不死身のごとく健康を取り戻して頑張ってくれていました。昨年末から、次の3月で退職したいという申し出が口答でありましたが、小川さんの生き甲斐は夢二を守ることであり、それが病魔に打ち勝つバネとなっていたので、別に出社せずとも、長期休暇のつもりで安心して休んで療養し、また元気になって皆を指導してくださいと言っていました。この春先に、退職の必要は無いので元気になるまで現役で療養するよう電話した際も、声は明るく元気で、サブマネージャーをしている娘を気遣ってくれて、「今は美術館の運営も落ち着いて、小嶋サブマネージャーで十分やれますよ。館長大丈夫です!」と逆に励ましてくれました。思えばそれが最後の言葉になりました。 私が小川さんと直接仕事をするようになったのは、1999年両備グループの代表となり、2001年美術館の館長になってからです。既に夢二生誕120年が目前に迫っていました。 生誕100年の時には何をすべきか元館長の故・松田基さんから相談され、それまで西大寺のバスセンターにあった夢二郷土美術館の入館者数が、立地上の理由からあまり思わしくなかったので、思い切って西大寺鉄道の思い出の地、後楽園駅跡地である現在の位置に移転するように具申しました。 生誕120年の催事は、夢二が単なる夢二式美人の画家でなく、心の詩を絵に表した詩画人であり、肉筆作品以外にも雑誌や本の装幀などのデザイン分野をはじめ、人形制作まで手がけ、また、日常生活に芸術を取り入れるべく、榛名山美術研究所を設立しようとしたマルチアーティストであることを皆さんに知っていただこうと、「夢二の二つの故郷」をテーマに企画することにしました。 夢二郷土美術館は大作の肉筆作品を中心に収集していますが、群馬県にある竹久夢二伊香保記念館は、デッサンやデザイン・資料関係を中心に収集されていて、2館が協力すれば夢二の全体像が分かると思い、生まれ故郷の岡山と、夢二が晩年にこよなく愛した第二の故郷ともいえる榛名山(伊香保)の二つの故郷をテーマとして開催したいと考えました。小川さんにその企画案でまとめるよう伝えると、企画案の骨子はすぐにできましたが、竹久夢二伊香保記念館の木暮館長に作品出展をご了解いただけるかが問題でした。しかし、小川さんはまるでこの日のあることを読んでいたかのように、木暮館長と親交を結んでいてくれ、髙島屋の鈴木社長の取り計らいもあって、朝日新聞主催、髙島屋各店を会場として開催との意向をもらい、小川さんと伊香保の木暮館長を訪問してお願いしたところ、ご快諾いただけ、この夢二生誕120周年は大成功でした。 陰になり陽向になっての献身的な小川さんの努力もあり、夢二郷土美術館の今日があると思っています。 心から小川さんのご冥福をお祈りするとともに、その思いをしっかり引き継いで皆でこの夢二郷土美術館を守っていこうと誓って館員で黙祷を捧げました。 また12月9日まで3期(明治・大正・昭和)にわたり開催中の「もっと知りたい竹久夢二」と題した企画展は、小川さんの著作本『もっと知りたい竹久夢二 生涯と作品』(東京美術)をもとに構成されました。この企画展が遺作展になったのも、ひょっとすると小川さんらしい強い遺志があったのかもしれません。本来ならば「小川晶子さんを偲ぶ会」とも思いましたが、ご家族の内輪でとのご意思を尊重して、会場に小川晶子さんを偲ぶコーナーを設けさせていただくことで、偲ぶ会としたいと思います。 ぜひ小川晶子さんの生涯を込めた夢二作品展をご覧いただき、小川さんの在りし日を偲んでいただきたいと思います。

合掌