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館長 小嶋光信
堺市にあるアルフォンス・ミュシャ館から当館へ、大阪万博に向けた企画展として夢二作品借用のお申し出があり、小嶋ひろみ館長代理がそれなら二館で連携の企画展をしたらと提案したところトントン拍子に話が決まり、この度初めて油彩画や水彩画を含む65点のミュシャの作品が岡山の当館で展示されることになりました。ミュシャの作品と夢二の作品の対比など趣向を凝らした夢二作品82点とともに147点の豪華な展覧会となったと思います。
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)はアール・ヌーヴォーを代表する人気画家であり、竹久夢二(1884-1934)は日本の大正ロマンを代表する根強い人気のある画家です。年齢的にはミュシャがふた回りくらい夢二より先輩ですが、ほぼ同じ時代を駆け抜けた東西を代表する人気画家で、この二人の芸術家にはお互いによく似た特徴があります。
ともに生活のために挿絵画家からスタート
ともにマルチアーティストの先駆者
ともにマルチアーティストの先駆者
ミュシャは挿絵画家として出発し、グラフィックデザイナーとして画家のみならず演劇などのポスターやビスケットのパッケージ、月刊誌の表紙や工業デザインなど多彩な作品を残したマルチアーティストで、夢二は初め詩人を目指したが生活のために挿絵画家からスタートして夢二式美人で一世を風靡した画家であり、千代紙や絵ハガキ、半衿や帯などのデザインまで手がけたまさにマルチアーティストです。
ミュシャは女性をしなやかな曲線で表現し、夢二はS字カーブで夢二式美人を表現
ミュシャは星や花や宝石を女性の姿を用いてしなやかな曲線と鮮やかな色彩で表現してミュシャ・スタイルと言われる画風を確立しています。かたや夢二は女性の内面まで表現するかのような、しなやかにS字カーブを描く身体のラインに少し物憂げで大きな瞳の女性で、いわゆる夢二式という画風を確立しています。夢二は心を打つ詩と画との組み合わせも特記に値します。
庶民も楽しめる芸術を確立
ミュシャは当時の特権階級だけでなく一般のファンが楽しめるようにリトグラフで、夢二は「庶民の暮らしに芸術を」という思いから木版画で多くの作品を残しています。
このように多くの共通点を持ったミュシャと夢二を対比しながら鑑賞できるということは、ミュシャファンと夢二ファンにとっては又とない企画で、東西のミュシャ・スタイルと夢二式のコラボレーションで新たなファン層へと広がっていくのではないかと期待しています。
長い冬も終わり、春の足音が聞こえはじめましたので、ぜひお出かけください!

