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館長メッセージ
夢二郷土美術館館長
小嶋光信
竹久夢二学会の2016年度の総会と2017年度の活動方針を決める理事会が拓殖大学の文京キャンパス「後藤新平・新渡戸稲造記念講堂」で開かれました。
今回、初めて拓殖大学を訪問し、新渡戸稲造さんが学監をしておられて、後藤新平さんがその後の学長だったということを知りました。素晴らしい指導者に恵まれた大学で、風格のある学舎での学会の開催に、しっかりと学会運営をし、多彩な夢二芸術の研究推進とその研究成果を広く知っていただいて、夢二芸術の伝道を続けていこうという気持ちも新たに、そして更に強くなりました。
竹久夢二学会は、夢二生誕130年記念として開催した「夢二とロートレック」展を監修してくれた帝京大学の岡部教授の提唱で生まれました。現在は、高階先生が会長で組織も強化され、多彩な夢二の研究を目指す会らしく、多彩な会員が学会活動に勤しんでいます。今年は学会誌も発行される予定です。
今年の基調講演は、高橋世織さん(日本映画大学 映画学部長)が「瞳、瞼、瞬き-映画・映像の世紀の図像学」と題して、「まばたき行為に関するお話で、映画や写真が登場し、どのような表情やしぐさが新たに浮上してきたか」をテーマに、あらためて夢二画における「眼」に着目し、説明されました。
三白眼は日本人特有の白目であり、「サンパク」と海外でも言われるということを初めて知りました。三白眼とはあまり良い表現には使われませんが、絵画や歌舞伎、映画では独特の雰囲気を醸し出す目の使い方です。歌舞伎の「見栄を張る」などが代表的でしょう。夢二の松竹「キネマ」やセノオ楽譜の表紙「白き手に」などを引用したお話を興味深く聞かせていただきました。
夢二研究の西恭子さん(女子美術大学 講師)の「社会派としての画家『夢二』-コマ絵を中心に」では、「夢二の女性問題に関心を持つより、夢二の芸術そのものを評価することが大事」と喝破し、挿絵画家としてデビューした社会派の夢二の平民社との関わり、「法律新聞」について語られました。竹久夢二が影響を受けた創作者や影響を与えた井伏鱒二の話などは圧巻でした。
陸偉栄さん(早稲田大学 招聘研究員)の「豊子愷と竹久夢二-豊子愷の着色画を中心に」では、夢二に大いなる影響を受けた対比が大変面白く、有意義でした。
当館からは、小嶋ひろみ館長代理が発案した「こども夢二新聞」や「こども学芸員」の取り組みが紹介され、次代に夢二芸術を伝承する手法として興味を持っていただき、高い評価を受けていたことからも、当館の活動に手応えを感じました。
森誠造さんの緻密な「精説竹久夢二-画業の量的特徴」は夢二研究の分析には大いに役立つと言えるでしょう。
最後に岡部昌幸教授の「竹久夢二と官展美人画の勃興」で締めくくりとなり、多岐にわたる研究発表に今後の学会の広がりを感じました。
また、今回は初めて学会賞が設けられました。第一回の受賞者として昨年春の国際シンポジウムに参加いただいた直井乃ぞみさんとサビーネ・シェンクさんによる、初の夢二の英語での出版に贈られることになり、海外にいるお二人の代理として、直井さんのお母さんに代表して賞状と副賞を受け取っていただきました。懇親会でも盛り上がり、学会に入りたいという希望者の声も聞かれるようになりました。
来年は、岡山で学会・大会が催されます。夢二の生誕地での開催であり、大いに趣向を凝らして、情報発信をしたいと思います。