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沿革
夢二郷土美術館初代館長 松田基

明治十七年(1884)九月十六日、岡山県邑久郡本庄村に生を享けた竹久夢二は、美神の恩寵をうけ、明治末期から大正、昭和の初期にかけ時代の寵児として一世を風靡し、美の創造にその生命を燃焼しつくして、漂泊とロマンの五十年の生涯を昭和九年(1934)九月一日富士見高原療養所に終えた。東京雑司ヶ谷の墓地には、こよなき友であった有島生馬の筆になる「竹久夢二を埋む」の墓碑があり、毎年の夢二忌には憧憬の人々により、かって香華の絶ゆることはない。
山河は人を育て人は芸術を創るという。風土的発想を以てするなら、古代から文化が幸わい、画聖雪舟、玉堂を生んだ吉備の系譜の中に、夢二も亦、その永遠の芸術で不朽の名をとどめようとしている。
近年、年を追って夢二に対する認識と評価が高まり、彼に寄せる国民的ともいえる大衆の憧憬は根強い。“芸術はもう沢山だ”“日本に生まれて、ここにあり”と言い切って、通俗性の中に、人生と庶民の哀歓をうたいあげ、その時代の美と生活とファッションを創造したユニークな夢二芸術は、夢二の前に夢二なく、夢二の後に夢二なしで、日本のロートレック、ムンク、現代の歌麿と称賛され、日本においてアールヌーボー(世紀末芸術)を開花させ、不滅の光芒を放っている。
当財団が、夢二生誕百年を記念して「夢二郷土美術館」を日本三公園の一つ、後楽園外苑に建設したことは、単に郷土岡山にあって夢二を顕彰するにとどまらず、祖国日本の国運を賭した明治の戦役と昭和の無謀な大戦の間にあって、大正という束の間の開放と自由の、言いかえるなら、戦後デモクラシーの忘れられた母型ともいうべき大正の時代思潮を考察、研究する好個のよすがともなれば幸せである。

夢二生誕百年 昭和五十八年九月十六日記

初代館長 松田基

美術館略年譜
1951(昭和26)年
松田基(当時両備バス社長)が大阪駅構内の古本屋で夢二の作品「加茂川」と「女」に出会い購入。竹久夢二の作品の蒐集を始める。
1966(昭和41)年
両備グループの始まりの地である岡山市西大寺に夢二郷土美術館を創設(創設者・初代館長:松田基)
1970(昭和45)年
瀬戸内市邑久町本庄の竹久夢二の生家を整備し、夢二郷土美術館 分館「夢二生家」として公開。
1979(昭和54)年
両備檉園記念財団発足。夢二生誕95年を記念して、「夢二生家」周辺を公園として整備し、夢二が設計して建てたアトリエ付き住居「少年山荘」を復元、公開。
1983(昭和58)年
生誕100年記念「竹久夢二百選展」開催。(1/4〜1/16日本橋三越)
1984(昭和59)年
夢二生誕100年を記念して、西大寺から岡山後楽園のそば(岡山市中区浜)に移設して美術館新本館を開館。(設計:浦辺鎮太郎氏)

1985(昭和60)年
郷土芸術家の作品の収集、展示による地域活動に対し、岡山県内初受賞となる「サントリー地域文化賞」受賞。
1992(平成4)年
両備檉園記念財団から美術館部門を分離、「財団法人両備文化振興財団」が発足。
夢二郷土美術館開館25周年記念「夢二とその世界展」開催。
(10/21〜11/1吉備路文学館、天満屋岡山店、夢二郷土美術館本館)
1995(平成7)年
生誕110年「竹久夢二展」開催。
(1994.12/24〜1995.1/29刈谷市美術館 2/9〜2/21大丸ミュージアムKYOTO 3/17〜4/16山形美術館)
1999(平成11)年
夢二郷土美術館館長、両備檉園記念財団理事長、両備文化振興財団理事長に松田堯会長就任。
2001(平成13)年
夢二郷土美術館館長、両備檉園記念財団理事長、両備文化振興財団理事長に小嶋光信社長(現:両備グループ会長)が就任。
夢二郷土美術館名誉館長に松田堯会長就任。
2004(平成16)年
竹久夢二生誕120年記念 岡山、伊香保 二つのふるさとから「竹久夢二展」開催。
(3/17〜3/29日本橋髙島屋 4/14〜4/26大阪・なんば髙島屋 4/28〜5/17京都髙島屋 6/2〜6/14JR髙島屋(名古屋) 9/8〜9/20岡山髙島屋 10/6〜10/18横浜髙島屋)
2005(平成17)年
竹久夢二生誕120年記念「竹久夢二展」開催。(1/19〜1/31大丸札幌店 4/9〜5/15明石市立文化博物館)
2007(平成19)年
夢二郷土美術館本館がミシュランのガイドブックで一ツ星に選出。
2009(平成21)年
竹久夢二生誕125年記念「竹久夢二展」開催。
(8/26〜9/6新宿髙島屋 9/16〜9/28岡山髙島屋 2010.1/6〜1/25京都)
2012(平成24)年
公益財団法人両備文化振興財団へ移行。
2016(平成28)年
アメリカ ロサンゼルスに所在がわかった幻の油彩画《西海岸の裸婦》を新収蔵。
2017(平成29)年
「夢二郷土美術館 本館」を岡山出身のデザイナー 水戸岡鋭治氏のデザイン監修で大幅 リニューアル。〈art café 夢二〉設立。
2019(平成31)年
「夢二生家」と「少年山荘」をリニューアル、「夢二生家記念館・少年山荘」としてオープン。